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おそらのうえで。

おそらのうえで。

*いつもと違う*




いつもの時間の
いつもの君を乗せた電車は
階段をかけのぼる私をおいて
ドアをしめた。


*いつもと違う*

「うっそぉ…」

階段を上り終えた私は
肩で大きく息を吐く。

今日に限ってHRが長引いた。
号令とともに教室を出て
急ぎ足で駅に向かったけど
時間はいつもの時間をさしていて
電車は少しずつ遠ざかる。

ベンチに座って
時刻表で次の電車を調べる。


『いつもとちがう明日になる』

昨日そう思ったけど
ほんっと、いつもと違う。
君を見ない平日は久しぶり。


だからといって
私は君に会うために
いつもあの電車に乗ってるんじゃなくて
ただいつも偶然同じ電車で
いつも偶然そこに
君がいるだけ。


しばらくして次の電車が
ホームに入ってくる。

いつもより少し混み合った電車。
いつも私が座る席には
どこかの学生さんが座ってた。

窓にうつる自分が
ものすごく挙動不審なことにふと気付く。

なんども言うけど
別にいつもの時間にいつも偶然
乗り合わせてるだけであって
待ち合わせとかしてるとかじゃない。

だからこうして君がいないことは
特別なことでも何でもなくて。

ただね
いつもそこにあるはずのモノがないと
ちょっと物足りないじゃん。
そんな感じ。



電車がいつもの駅につく。

田舎の小さな駅。
めずらしく誰かが乗ってくる。

すれ違った人は
見覚えのあるジャケットに
嗅いだことのある香水の香り。


思わず振り返った私の目には
目をまんまるくした君がうつった。


なんでココに君がいるのか

君がココでなにしてるのか

なんでこの電車に乗ってくるのか

いろんなことが頭をよぎるけど
でもたしかにココに
君がいる。

なんだか君をまともに見れなくて
視線をそらす。

ふと目に飛び込んできたのは
君の手の中のさかさまの本。

几帳面だって思ってた君お
意外な一面を見たようで
なんだか笑えた。

「本、逆さですよ」

君はあわてて本を持ちかえる。
それと同時にドアが閉まって
電車が動き出す。

窓から見える君に私は
ちいさく手を振ったんだ。




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